旅も終わりに近づいていた。前日の夜にチェンナイを出発した夜行列車は、定刻よりも20分遅れでマイソールに着いた。11月、マイソールの朝は少し寒い。AC3(エアコン3段ベッド)の車内も凍るような寒さで、インド人ですら鼻をかんでいた。ここまでして人間を冷凍する意味は絶対にないはずだが、温度を調節する機能が備わっていないってことも、インドなら十分ありうる。
マイソールまで足を延ばした理由は、ライトアップされたマイソール宮殿を見るためだ。旅のはじめにはマイソールのIT産業がどんなものか垣間見たいってのもあったが、今となっては興味が沸いてこない。それまでの旅で、喧伝されているインド経済ってのは、旅行者から見える部分だけでも、十分に幻滅できるものだってことに気づいていた。とにかく街の風景なんて二の次で、禍々しい電飾につながれた王宮を見たいとだけ思っていた。なんだか、この街に来たのはヤケクソだったのかもしれない。
そんなこんなで駅から歩き出すも、1kmほど歩いたところで、駅の西側へ歩いてきたことに気付く。まったく人がいないし、大きな道の両側は気持ちのいい雑木林になっていて、どう考えても市街地へ向かっているようには思えない。足の裏とヒザ裏に張りを感じながら、来た道を歩いて戻る。早朝だから車もまばらだ。人が多いインドで人に出会わずに自然のなかを歩くなんて、なんだかとても貴重な時間が流れていく。
マイソールの街は綺麗だという話をどこかで聞いた記憶がある。2001年だかの調査ではチャンディーガルについで2位だっとか、確かそういった話だったはずだが、どこで聞いた話なのかは覚えていない。道に牛糞はたくさん落ちているものの、ハエがほとんどいない。ゴミも確かに少ない。個人的にはフォートコチのほうが綺麗だったと感じるが、それでもマイソールだって悪くはない。
道端には花の環を売る人たちが大勢いる。場所はデヴァラージマーケットの横あたり。花の市場でも建っているのだろうか。いったいこの花の環を何に使うのかという疑問を抱えながら、ただ歩く。笛売りのオヤジがピーヒャララと鳴らしつつ売り込みにくる。早朝に笛を買わせて、僕に何をさせようとしているのか疑問を抱えながら、ひたすら歩く。花の売り子と客が揉めている。そして彼らを取り囲むようにインド人が群れている。まったく、いつものインドの光景だ。
マイソールへの旅では、疲れを減らすために、移動はAC3を使い、宿もAgodaで前もって予約しておいた。何はともあれ、まずは宿に向かう。宿は観光客向けホテルが集まる一角にあった。チェックインしたい旨を伝えると、フロントのインド人が面倒くさそうに、そして鈍重な動きで台帳を調べ始めた。このときの自分は、図らずも朝から歩くことになった疲れに加えて、緩そうな服に無精ヒゲと蓬髪という姿。フロントのインド人からは、人を値踏みするような視線を頂戴する。Agodaで予約していることを伝えると、奥からワイシャツを着た兄ちゃんが出てきた。このホテル「Palace Plaza」では、どうやら客の見た目で対応が違うらしい。
インドのホテルのフロントには、どう見ても従業員に見えない奴輩がたむろしていることがあって、ここのホテルでもそうだった。もしかしたら経営者か、あるいはその関係者なのかもしれない。ホテルの清掃係や配膳係は、皆が一様に質素な服を着ているし、おしなべて客への対応が良い。一方でフロントにいる奴輩は、良い身なりをしているにもかかわらず横柄な態度であることが共通している。
なんだかホテルに漂う彼我の「異質さ」を感じながらも、考えることを止めてベッドに倒れこんだ。旅の疲れが五感の働きを拒否している。日本へ帰ろうと思った。
マイソールまで足を延ばした理由は、ライトアップされたマイソール宮殿を見るためだ。旅のはじめにはマイソールのIT産業がどんなものか垣間見たいってのもあったが、今となっては興味が沸いてこない。それまでの旅で、喧伝されているインド経済ってのは、旅行者から見える部分だけでも、十分に幻滅できるものだってことに気づいていた。とにかく街の風景なんて二の次で、禍々しい電飾につながれた王宮を見たいとだけ思っていた。なんだか、この街に来たのはヤケクソだったのかもしれない。
そんなこんなで駅から歩き出すも、1kmほど歩いたところで、駅の西側へ歩いてきたことに気付く。まったく人がいないし、大きな道の両側は気持ちのいい雑木林になっていて、どう考えても市街地へ向かっているようには思えない。足の裏とヒザ裏に張りを感じながら、来た道を歩いて戻る。早朝だから車もまばらだ。人が多いインドで人に出会わずに自然のなかを歩くなんて、なんだかとても貴重な時間が流れていく。
マイソールの街は綺麗だという話をどこかで聞いた記憶がある。2001年だかの調査ではチャンディーガルについで2位だっとか、確かそういった話だったはずだが、どこで聞いた話なのかは覚えていない。道に牛糞はたくさん落ちているものの、ハエがほとんどいない。ゴミも確かに少ない。個人的にはフォートコチのほうが綺麗だったと感じるが、それでもマイソールだって悪くはない。
道端には花の環を売る人たちが大勢いる。場所はデヴァラージマーケットの横あたり。花の市場でも建っているのだろうか。いったいこの花の環を何に使うのかという疑問を抱えながら、ただ歩く。笛売りのオヤジがピーヒャララと鳴らしつつ売り込みにくる。早朝に笛を買わせて、僕に何をさせようとしているのか疑問を抱えながら、ひたすら歩く。花の売り子と客が揉めている。そして彼らを取り囲むようにインド人が群れている。まったく、いつものインドの光景だ。
マイソールへの旅では、疲れを減らすために、移動はAC3を使い、宿もAgodaで前もって予約しておいた。何はともあれ、まずは宿に向かう。宿は観光客向けホテルが集まる一角にあった。チェックインしたい旨を伝えると、フロントのインド人が面倒くさそうに、そして鈍重な動きで台帳を調べ始めた。このときの自分は、図らずも朝から歩くことになった疲れに加えて、緩そうな服に無精ヒゲと蓬髪という姿。フロントのインド人からは、人を値踏みするような視線を頂戴する。Agodaで予約していることを伝えると、奥からワイシャツを着た兄ちゃんが出てきた。このホテル「Palace Plaza」では、どうやら客の見た目で対応が違うらしい。
インドのホテルのフロントには、どう見ても従業員に見えない奴輩がたむろしていることがあって、ここのホテルでもそうだった。もしかしたら経営者か、あるいはその関係者なのかもしれない。ホテルの清掃係や配膳係は、皆が一様に質素な服を着ているし、おしなべて客への対応が良い。一方でフロントにいる奴輩は、良い身なりをしているにもかかわらず横柄な態度であることが共通している。
なんだかホテルに漂う彼我の「異質さ」を感じながらも、考えることを止めてベッドに倒れこんだ。旅の疲れが五感の働きを拒否している。日本へ帰ろうと思った。

